箱田ほか『認知心理学』(有斐閣)
箱田裕司・都築誉史・川畑秀明・荻原滋『認知心理学』(有斐閣、2010年)
有斐閣New Liberal Arts Selection (http://www.yuhikaku.co.jp/books/series_search/50)の一冊。本棚にあればいろいろと便利だ。
このレーベルからは心理学分野の本がたくさん出ており、HP上だと11冊のうち4冊分を占める(2016年2月現在)。『認知心理学』のほかには、『心理学』『社会心理学』『臨床心理学』である。『心理学』だけは2000年代の出版なので、「そろそろ新版がでるんじゃなかろうか」という予想のもと、購入はせずに図書館から借りてある。
今回読んだのは、『認知心理学』である。2016年12月に第6刷を数えており、着実に売れている教科書だといえる。
心理学関係の本で面白いのは、さまざまな実験である。研究者たちは、自分の主張を裏づける根拠として、工夫を重ねた実験を提示する。実験によって研究が進んでいく。
この本は、ほとんどの部分が実験(つまり論文)を軸に書かれているので、研究動向論文の簡易版を読んでいる気になる。その分野の研究の蓄積を、専門家の案内に従って読む。ただそれだけで楽しい。
もうひとつ。実験されるのが「自分だったら……」という感覚が面白さにつながる。研究として読むことと、自分の感覚として読むことが併存するのだ。研究の対象が人間であるから、実験される側として、突き放して読むことが難しい。私の研究分野なら「対象」と「私」をできるだけ分けて読むけれど、心理学では門外漢の特権として「対象」と「自分」をごちゃまぜにして読むことができる。そして、それが望ましい。ああ楽しい。
教科書なので、具体的な内容を書くには適さないだろう。もとよりこのレーベルは「門外漢として、最初に参照したい一冊」を目指しているのだろう。この本も、手元に置いておくだけの価値がある本だった。
とはいいつつも、最後に構成だけ。
第1部 認知心理学の基礎:感性・注意・記憶
第1章 認知心理学の歴史とテーマ
第2章 視覚認知
第3章 感性認知
第4章 注意
第5章 ワーキングメモリ
第6章 長期記憶
第7章 日常認知
第8章 カテゴリー化
第2部 高次の認知心理学:言語・思考・感情
第9章 知識の表象と構造
第10章 言語理解
第11章 問題解決と推論
第12章 判断と意思決定
第13章 認知と感情
第3部 認知心理学の展開:進化・社会・文化
第14章 認知進化と脳
第15章 認知発達
第16章 社会的認知
第17章 文化と認知
第18章 メディア情報と社会認識