白くま生態観察記

上洛した白いくまもん。生態日記。冬眠するので春になったら起こして

京大の学園祭

――いったい子供は、「絵」を描いているのだろうか。「絵」ではないのだ。自分の若々しい命をそこにぶちまけている(岡本太郎『自分の中に毒を持て』、123頁) 京大は学園祭の時期である。 11月23日から26日までの4日間。 直接の会場ではないはずの院棟周辺に…

久保ミツロウ『モテキ』と古谷実『シガテラ』

久保ミツロウ『モテキ』全4.5巻(講談社) 古谷実『シガテラ』全6巻(講談社) 思春期において、自意識とのつき合いかたは、かなり重要な位置を占める。 自意識がないのは人間的にどうかと思うし、逆に自意識に振り回されても、人生は先に進まない。思春期を…

信頼のエチュード

鴻上さんの『表現力のレッスン』を読んでいる。 この本は「信頼のエチュード」という演劇のレッスンで始まる。 ふたりで行う。前後に立って、前のひとは目をつぶって後ろに倒れる。後ろのひとは、倒れてくる前のひとを支える。 前のひとの信頼が試されるレッ…

三浦しをん『風が強く吹いている』

三浦しをん『風が強く吹いている』(新潮文庫、2006年)。 夜中の11時に読みだした。そのまま、深夜3時半まで読んでいた。 普段なら「明日もあるし、ここでやめて寝よう」と手をとめる。しかし本書には、先を読みたいと思わされた。心のままにページをめくっ…

芥川龍之介の恋文

芥川龍之介の恋文、やばい。 なんだこれは。 http://weemo.jp/v/f67f657a こんな恋文をもらったら、好きになってしまう。 たとえ嫌いな相手からもらったとしても、この恋文にはグラッときてしまう。 こころがうつくしい。 罪だよ、芥川さん。 もうひとつ見つ…

フランク・ウイン『フェルメールになれなかった男』

フランク・ウイン(小林頼子・池田みゆき訳)『フェルメールになれなかった男――20世紀最大の贋作事件』(ちくま文庫、2014年) 友人からのおすすめ。「芸術家に対して我々が抱く諸々のイメージそのままの繊細かつ傲慢な画家が、自分を置き去りに先に先にと進…

ふんどし

とつぜんだが、ふんどしを締めたことはあるだろうか。 真っ白な長めの手ぬぐいを股の間に通して、腰のあたりでクルクルっと巻いて、ギュギュっと締めつけるだけ。あーら簡単、3分くらいで締められる。 中学時代の夏休み、学校の課外活動のことである。 毎年…

救い

研究をしていた。 歴史系の研究である。 政治学の問題に、歴史文書を用いて迫る。性質上、文書館にこもらざるをえない。ほこりを被った史料をコピーする。慣れない崩し字を、辞書を片手に読みほどく。さまざまな史料と照らし合わせて、「この程度は言えるだ…

司馬遼太郎『竜馬がゆく』

司馬遼太郎『竜馬がゆく』(文春文庫、1974-1975) むかし、ある人がツイッターで呟いていた。 思いだして、秋の古本市(百万遍)で買った。全8冊。しめて600円なり。 いやーおもしろかった。 坂本竜馬を中心に、幕末史を追っていく。まず、坂本竜馬の造形が面白…

青木琴美『虹、甘えてよ。』

青木琴美『虹、甘えてよ。』第1巻(小学館、2017年) 少女漫画である。しかし少女漫画ではない。 「その後」を正面から描く物語。 漫画を読む人なら、青木琴美という名前は聞いたことがあるはずだ。たとえなくても、『カノジョは嘘を愛しすぎてる』や『僕の…

人間の強さ

『マツコの知らない世界』を見ていた。いろんな分野のオタクが出てきて、好きな分野を紹介していく番組。触れたこともない世界が目の前に広がるから、楽しい。 さて、ホットケーキミックスの回である。 この番組では、ゲストが「なぜ対象にのめりこむように…

『蔵』水出しコーヒー

高校生まで、コーヒーが飲めなかった。 子どものころから、親がコーヒーを淹れたときに部屋中に広がるコーヒー独特の匂いが嫌いだった。中学生のとき、「おいしいよ」と言ってくるので、漂ってくる匂いに鼻をつまらせながら一口飲んだ。経験したことのない苦…

説明の仕方

とある講義の一風景。 教授が人を指名する。 「多元主義って、なに? 説明して」 質問は突然やってくる。指された人は、一気に緊張したのだろう。心拍数があがって、呼吸が浅くなる。その証拠に、若干声が高めになっている。 「えー、さまざまな、利害関係者…

自分自身に対面する。そうしたら、己を殺せ

岡本太郎『自分の中に毒を持て』(青春文庫、1993年) この本は、あるエピソードで始まる。 岡本さんが、お坊さんの前で講演を頼まれたときのことである。 前にしゃべった講師が「道で仏に逢えば、仏を殺せ」という言葉を使った。有名な言葉だ。一種真理をつ…

人間は障害物

小雨が降るなか、自転車で走る。 目的地まで1時間くらいかかる。雨も降ってるし、早めにつきたい。 帽子をかぶって目に雨が入るのを防ぐ。レインウェアの上下を着る。荷物をビニールで覆う。 よーく見なければ、僕とはわからないだろう。帽子に隠れた顔で判…

鴨川と『パレード』

吉田修一『パレード』(幻冬舎文庫、2004年) 昼すぎに鴨川に行く。デルタでは、ちっちゃい子が遊んでいる。 「ママー、えびいてはるー!」 「えーどこどこ?……うわっ、つめたっ」 スボンをめくりあげて、母親が川のなかに入っていく。この時期の水は、だん…

マインドフルネス

ストレス対策1 マインドフルネスについて。 つらかった時期があった。どん底だった。 そのとき生きるために身につけた術のひとつが、マインドフルネスだった。 マインドフルネスがちょうどテレビで話題になりかけた時期だった。わかりやすい書籍も出始めた時…

大学生

高校生のころ、近くに大学生がいた。彼は服装や髪形に気を遣っていた。背筋もピンとしていて、歩幅が広い。自信にあふれていた。かっこよかった。犬を連れている姿がさまになっていた。犬が立ち止まると、前かがみになって犬を見る。かっこいい。これが大学…

こころ

「違うんだ。君の心が閉じているんだ。もっと目の前の人間を見てよ」 心がどれだけ大事なのか、わかっていなかった。 複数人が集まって何かを作り上げるとき、まず個人の努力が重要だと思っていた。 個人が努力して、必要なことをやるのが決定的に重要だと思…

塾講師

塾講師をしていたことがある。 地元に根ざした小規模の塾だった。 中学3年生、グループ授業の話である。 「初心者に受験学年を任せていいのかよ」と思った。なんの因果か、はじめて受け持ったのが中三だったのだ。教える技術も何もかもわからない。教科は国…

将来の話

「俺はさ、○○をしたいんだよね」 学部生と話していて自然に将来の話になる。 大学には、さまざまな地域から学生が集まる。多くの人は4年ほどで就職する。京都には就職先が少ないから、学生の目線は地元か東京にいく。たった4年で、京都から離れていってしま…

リズム感のない俳優

鴻上さんの著書に、こんなエピソードがある。 名越という、リズム感のない俳優がいた。踊りは下手だけれど、だれよりも楽しそうに踊る。演出家の鴻上は、うまくないけど幸せに踊る姿をみて、いつも幸福になる。それでいいと感じていた。 あるとき名越は、う…

道化

「○○のこと、どう思う―?」 「あいつトロいし、変に笑ってるし、なんかキモイわ―。無理」 「だよな。俺も無理だわ。話しかけてくんなっての」 となりから会話が聞こえてくる。 自分のことかと思って傷つきかける。こっそり顔をみて、知らない人であることを…

竹内友『ボールルームへようこそ』

竹内友『ボールルームへようこそ』(講談社) どうやって魅力を説明すればいいのか、ずっと考えていた。もちろん少年漫画的な面白さは満点である。道を極める厳しさを対比して、主人公の未熟さとひたむきさを強調する特徴もある。絵の艶もあって、かなりおも…

妙顯寺

京都の拝観料は高い。そこらの社寺に入ろうと思えば500円かかるし、有名なところだと700円もかかる。強気な値段設定だ。毎週のように観光しているので、硬貨が財布から消えていく。500円に見合うものがあれば文句ない。けれど、実際になかに入ってみると、ア…

ダンス姿勢保持と古武道

竹内友『ボールルームへようこそ』(講談社)が私的ブームである。 他人に嫌われないよう目立たず生きてきた主人公が、「ダンスという場では自分を出してもいいんだ嫌われないんだ」と気づき(第4巻まで)、パートナーと正面からぶつかり合うなかで、自分な…

圓光寺

圓光寺 雨が降った。よい状態の苔を見られる。圓光寺に行ってきた。 圓光寺のある一乗寺は坂になっている。急なので、自転車で登るのは難しい。自転車を押しながら目的地まで。 圓光寺http://www.enkouji.jp/grounds.html 池泉式の庭園がある。建物に座って…

高石宏輔『声をかける』

高石宏輔『声をかける』(晶文社、2017年)。 某氏がおすすめしていた。「ナンパは自傷。」との言葉にひかれて購入。 よかった。 【構成】 話すのが苦手、ノリに身を任せるのも苦手。はっきりいって、主人公は女性に声をかける人種ではない。しかし彼は、そ…

理想像

小学生のころ、大人になったらこうなりたいという理想像があった。 夢水清志郎だ。 はやみねかおる「名探偵夢水清志郎事件ノート」のシリーズに出てくる探偵だ。黒いスーツを年中着続けて、やせ形で身長は高い。針金細工みたいな。部屋にはうずたかく積まれ…

道尾秀介『光媒の花』

道尾秀介『光媒の花』(集英社、2012年)。 短編連作集。そうくるか! という驚きの連続で、心が揺さぶられる。緩急がしっかりしている印象。すごい。 友人が紹介していて、たまに読むサイトがある。「作家の読書道」だ。道尾さんは、「相手の頭の中に感情を…