白くま生態観察記

上洛した白いくまもん。観察日記。勝手にコルクラボ

もう一度だけ語ろうと思う。

飼い犬が死んでいく夢を見た。正確にいうと、殺した夢だ。 ぐったりと横たわっているのを見かねて抱き上げようとした。 しかし身体の芯に力が入っておらず、元気なときみたいにすんなり腕のなかに収まらない。身体が変にねじれるのを嫌がって、脚をバタバタ…

題名未定(1)

その男の剣は、周りの誰よりも重みをともなっていた。 ひと振りするたびに、空間がきしんだ。刀の速度に遅れて緊張がやってくる。力の余韻とともに、刀は静止する。静止したさまにも迫力があった。 彼が刀をおさめる所作も、なめらかだった。流れるような動…

見取り稽古の分解能を細かくする――見るということ

グループで居合を教わっているとき、教わっているAさんから 「きみは、ぼく好みの居合をするから……ちょっといいかな」 と声をかけてもらって、5分くらい個人指導を受けた。 Aさんは、居合というアートを探求している人である。教士の段位をもっているし(…

「あなたのことを、もっと知りたいよ」

あるひとに「自分のことを話さないよね」と言われた。 ぼくは静かに驚いて、目の前のひとを見つめた。反応できなかったのだ。 そのひとはさみし気な表情をまとって、 「ふつうはね、」 と続けた。 「1日、どんな風に過ごしているのかとか、いま外にいるのか…

小学校の想い出②

2000年のある日、『ハリーポッターと賢者の石』を買ってもらった。 小学2年生だった。 それまで夜更かしをしたことはなかった。暗くなるまでサッカーや缶蹴りをしていたから、夜の6時には疲れ果てて、夕食を食べたらすぐ寝ていた。 その日だけは、違った。 …

『グッド・ウィル・ハンティング』

「彼女に電話したか」「いや」「なぜだ」「……彼女は、ほかの女とは違う。頭もいいし、退屈しない。でも次に会うと、頭がよくなくて退屈かもしれない。いまのままなら彼女は完璧だ」「きみも完璧な自分を崩したくないんだろ?」「……」「超すばらしいフィロソ…

すべてを捨てたい衝動

映画『セッション』は、好きな映画である。主人公が交通事故に遭う場面を選択したのは残念だけれど、全体として好きな映画だ。 その一場面をなぜか思いだした。 付き合っている彼女に、主人公がやつあたりをする場面である。ドラマーを目指している主人公は…

書くことが怖い

6月から8月にかけて、怒涛のような日々を送った。 コルクラボ関連でイロイロあって、いろんな自分を知れて、いろんな人にも会えた。ずっと会いたかった佐渡島さんとも握手した。「また来てよ」とも言われた。 世のなかにはこんなに嬉しいことがあるんだと涙…

おまえさ、俺のこと嫌いだっただろ

「おまえさ、俺のこと嫌いだっただろ」 そう言ってウィスキーのグラスを傾ける目の前の男を、ぼくはただ見つめた。反射的にそんなことないと言おうとしたけれど、なぜか言葉にならなくて、その沈黙を彼が引き継いだ。「俺がしゃべると、何か違うんだよなーっ…

共感する、ということ。

相手に共感することが大事というけれど、共感するにはどうすればいいのだろうか。相手の何に、どのように共感すればいいのか。 話し方の本で言われるように、うんうんとうなずいたり、相手の言葉を繰り返したり、要約して返したり。こんなふうにすることが共…

七夕

笹にくくりつけられた無数の短冊を見ているうち、なんともいえない違和感がわきあがってくるのを彼は感じた。 ――なぜ、ほとんどの短冊が「……ますように」で終わっているのだろうか。願うだけでは意味がないじゃないか。願うのではなく、宣言したほうがいいの…

RAD「五月の蠅」

ツイッターで「こんなの書くやつは許せない」とRTされてきた、RADWIMPSの「五月の蠅」の歌詞を見た。 気持ち悪さがぶわっとこみあげてくる。 生理的に嫌悪感をもたらす表現のオンパレードだ。言葉はわかるけど、何を言っているのかわからない。狂気を閉じ込…

駄菓子:蒲焼くん

日曜日だというのに、その動物園には僕と僕の友人と見知らぬ女の子しかいなかった。 僕と僕の友人はずっとゴリラとにらみ合っていた。ゴリラが突進してくるのを待ち受けるようにガラスに額を打ちつけたり、ゴリラが胸をどかどか叩くのにあわせてこちらも胸を…

陸上部

高校1年の秋、ぼくは陸上部に入った。 校内のマラソン大会で3位に入って、陸上部のやつらに「一緒に走ろうぜ」と言われたからだ。走るのは楽しいかもしれないと思った。のちに関東大会にも出ることになるエースからも「いい走りしてる」とも言われた。入るし…

予感

あとになって思いかえしたら「2018年6-7月は人生の決定的な分岐点だったな」と思いかえす気がする。正体はみえないけれど、ひしひしとした予感を感じる。 直接のきっかけは、6月に佐渡島さんに「面白くて、的確」と言われたことで、続いて7月に「すごく好き…

ほんとに嬉しいときって、何も書けなくなるんだね

どうしようどうしよう。この嬉しさをどうすればいいんだろう。わかんないよ。 ふとしたときに顔の筋肉がゆるんで、にへらと笑ってしまう。道行く人に「ぼくね、いいことがあったんです。世界は愛に満ちてるんですよ」と声をかけたくなる。自分に「落ち着け」…

「自分のことを何も知らない!」――人生の転機⑤

なぜ、「付き合っちゃう?」と言われて尋常じゃなく狼狽したのか。 なぜ、論文で精神を疲弊するまで自分を追い込んでしまったのか なぜ、弱くてダメな自分を吐き出したとき、はじめて世界に受けいれてもらえたような気がしたのか。 同じ過ちを犯さないために…

「きみが好きだったよ」――人生の転機②

その日の夜になってから、彼女から返信がきた。「そうだね。会おう」ということだった。 会うことになったのはいいけれど、そのひとは忙しい期間に入っていて、むりに時間を取るのは悪いなと思った。もとはと言えば、ぼくが悪いのだ。あの夜にぜんぶ片づけて…

「私たち、付き合っちゃう?」――人生の転機①

お願い これから書いていくことは、6割ほんと、4割ウソです。個人を特定できない形で書いていきます。 この話はぼくの根幹にかかわるので、かなり文と内容が乱れます。コントロールしきれていません。しかしどんなに未熟でも、これを書けるようにならないと…

孤独と愛のおしまい。そしてこれから。

昔からの読者は知ってのとおり、このブログは孤独と愛をテーマのひとつにしている。 ぼくは昨年3月に親友を亡くした。 エッセー、あるいはある人のこと - 白くま生態観察記 それからずっと、さみしくてたまらなかった。京都に来てからも、毎日毎日、涙があふ…

エーリッヒ・フロム『愛するということ』新訳版(紀伊国屋書店、1991年)

エーリッヒ・フロム(鈴木晶訳)『愛するということ』新訳版(紀伊国屋書店、1991年) 超短文要約愛は世界にたいする能動的な態度・人格である。 ――ざっくり内容紹介 この本は「愛は技術だろうか」という衝撃的なことばで始まる(第1章)。 フロムによると、多…

福永武彦『愛の試み』再読

このブログでは、福永武彦をもとにして愛を考えてきた。 去年、すでに三冊を取り上げた。どれも拙くて福永さんを読んだことある人にしか伝わらないので、リンクは貼らない。 いくら拙いとはいっても、『愛の試み』を取り上げた回は酷すぎた。本を理解する気…

好きな人に告白する言葉を教えて

「好きな人に告白する言葉を教えて」という質問に対して、永六輔さんが答える。 とっても素晴らしくて、永六輔さんを好きになってしまう。 永六輔さん、まだ恋愛がよくわからなかった高校の時にこの回答をネットで見かけて衝撃を受けたのを覚えてる。 #永六…

頑張らない勇気

ぼくの周りの人たちは、普通の人よりも優秀で、頑張り屋さんで、気配りも効いて、自分でできることは自分でやって、他人に迷惑をかけようとしない。 振られた仕事はちゃんとこなすことはもちろん、周りの人が困ってたらヘルプに入って、「助けあうのが友だち…

無意識の検閲――純粋な感情

ぼくは人をよく好きになる。 たとえば人がぼくのために何かしてくれたとき。「ありがとー」と感謝の言葉を伝えるけれど、その後ろに(大好き!)と隠していることが多い。 ほかには、派手じゃないけど大事なことをやっている人を見たときとか、がむしゃらに…

大阪地震――手をつないで帰る親子

ゴロゴロゴロと揺れた。 何が起きたのかわからなくて、ぼんやりと目を覚ましながら、ああ地震かと気づく。 そしてグラグラッ、ドンッと身体が浮いた。 あっ、やばいなこれ。体験したことのない揺れだ。 寝ぼけていたから何も動けない。自作の本棚が倒れるの…

立つ――バランスをとるとは、どういう意味か

あなたが、友だちと電車に乗っていたとする。 立ち続けるゲームをしよう、と友だちに提案する。吊革などにつかまってはいけないし、足を一歩でも動かしてもいけないというルールだ。負けたほうがジュースをおごる賭けも追加する。できれば勝ちたい。 勝利条…

励まして。

あるひとから「励まして」と言われたことがある。 そのひとは自由なひとで、いつも笑っていて、マイナスの感情なんて傘に降った雨粒みたいに流れ落ちていくひとだった。 だから、そのひとが落ち込むなんて予想外で、ぼくに言ってくるのも予想外で、というか…

さらけだし漫画――We are lonely, but not alone.

大学3年のとき、ひとりの女性に「思ってること、ぜんぶ言っていいんだよ」と言われた。すでに限界だったぼくは、ドロッドロの感情をぶちまけてしまった。そのひとは、しばらく沈黙して「やってきたものが大事だったから、ぜんぜんできなくてつらいんだよ」と…

おかざき真里『かしまし飯』

「どんなひとが好きなの」と訊かれると、いつも回答に迷う。 迷って迷って開き直って「好きなひとが好きなんだよ。好きってそういうもんでしょ」と言いたくなるけれど、でも目の前のひとから求められているのは、そういう回答じゃない。 話のタネになる、拡…