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白くま生態観察記

上洛した白いくまもん。生態日記。

セネカ『人生の短さについて』

セネカ(中澤務訳)『人生の短さについて他2篇』(光文社古典新訳文庫、2017年)。 とりあえず表題作だけ読んだ。 多くの人の人生は、他人のために浪費されるのみである。そうした人生は他人を中心に回るから、多忙を極め、人生は短い。 いっぽうで自分の人…

曼殊院、修学院離宮

修学院離宮 http://sankan.kunaicho.go.jp/guide/shugakuin.html 曼殊院http://www.manshuinmonzeki.jp/index.html 2017年5月18日に、この二つに行ってきた。ついでに御霊祭も見た。お祭りは関東と変わらないので割愛。古楽の笛の音が美しく響く。 (註:自…

なんの研究をしているんですか

誰かに会うたび、「大学院生です」と自己紹介する。 嘘ではない。大学院に籍を置いているのだから。 わかっている人たちは、続けてこう問う。「なんの研究をしているんですか」。ぼくは学部卒論の内容を答える。 嘘ではない。あの論文は、考察すべき点をいく…

京響「ブルックナー第5交響曲(原典版)」

京都は、今年初の真夏日だった。31.7℃。まだ5月ですよ…… 情報どおり、風が吹かない。乾燥しているのだけが唯一の救いだ(それも今後は蒸してくる。考えたくない)。 こんな暑い日に京響の定期演奏会が開かれた。 追い打ちをかけるように、1430開演である。太…

三島由紀夫『美徳のよろめき』

三島由紀夫『美徳のよろめき』(新潮文庫、1960年)。 渡部昇一『「人間らしさ」の構造』で、「変に重くなくて軽い。筆のノリが違う」と絶賛されていた小説である。 とてもよかった。お薦めだ。 【あらすじ】 穢れをしらない淑女が、その純真さゆえに夫以外…

三木清『人生論ノート』

三木清『人生論ノート』(新潮文庫、1954年)。 「成功と幸福とを、不成功と不幸とを同一視するようになって以来、人間は真の幸福が何であるかを理解し得なくなった。自分の不幸を不成功として考えている人間こそ、まことに憐れむべきである」(「成功につい…

渡部昇一『「人間らしさ」の構造』

www.youtube.com 渡部昇一『「人間らしさ」の構造』(講談社学術文庫、1977年)。 先日、渡部昇一さんの訃報に接した。 氏の本は『知的生活の方法』は読んだことがあるし、訳書だとフクヤマ『歴史の終わり』を読んだことがある。 それよりも蔵書の多さが有名…

河合栄二郎「学生に与う」

河合栄二郎「学生に与う」『河合栄二郎全集』第十四巻、(社会思想社、1967年)。 某大学院に通う友人のおすすめ本である。古き良き学生を地で行く彼は、人生に悩みながら、そのもがきをブログにしている。たまに読むのだけれど、とてもいい。自分と対面して…

お米

3日ぶりに白米を食べた。 お米が甘い。かみしめるほど甘みを感じる。 鼻から空気を抜く。甘みが舌の奥までいきわたる。口蓋も含めて、口のなかすべてで味わう。葉巻やパイプ、ワイン、ウィスキーなどなら香りを楽しむためには必須の技法だけれど、じつは食べ…

居合

居合をはじめた。 きっかけは、ちょうど一週間前、岩清水八幡宮で居合道の奉納演武をみたことである。 巻いた畳や竹を切っていた人たちは、それこそ真剣だった。斬れる人は斬れていたし、失敗する人はかなり失敗していた。見ているうちに「切れそうだな」と…

福永武彦『忘却の河』

福永武彦『忘却の河』(新潮文庫、1969年)。 福永作品は、『愛の試み』『草の花』につづいて3作めである。 『愛の試み』では、「孤独と愛」について福永さんの認識を理解した。「充足した孤独は愛を試みる」という言葉に、胸を打たれた。 『草の花』では、…

なんとなく

読み返すと、むかしとは読みかたの変わる本がある。 当然だろう。 なにかを経験するたびに、自分の感情や周りの状況の記憶が蓄積されていく。自分が変わるのだから、味わいも変わってくる。 むかしは楽しめたものが、楽しめなくなる。 いまいち没頭できなか…

海がきこえる

『海がきこえる』 氷室冴子さんの原作小説を、ジブリが映画化した。はじめて観る。 【感想】 ジブリもこういうの撮るのか。ストーリー重視で、なんらかの目に見える困難が立ちふさがるものばかりだと思っていた。 『海がきこえる』はストーリー性を目指さず…

おかざき真里・羽海野チカもろもろ

おかざき真里『冬虫夏草』(ラポート、1994年)。 ――『シャッターラブ』(集英社、1998年)。 ――『彼女が死んじゃった』(集英社、2000年)。原作は一色信幸。 ――『渋谷区山町』(集英社、2004年) 羽海野チカ『ハチミツとクローバー』(白泉社、2002年) こ…

京都国際マンガミュージアム

京都国際マンガミュージアムhttps://www.kyotomm.jp/に行った。 【評価】 観光目的で行く場所ではない。 安い漫画喫茶を求めて行くところ。そのついでとして、いろいろな展示が楽しめる。 【探訪記】 烏丸御池からほど近くに、京都国際マンガミュージアムが…

京都大学

京都に来て10日くらいたった。 京都大学の環境はとてもいい。 大学図書館の蔵書数は日本で第2位である。ジャーナルも十分契約している。視聴覚設備もいいものがそろっている。 平日に限られているものの、24時間使うことのできる自習室が整えられている。 生…

想像力

母校の飲酒関連事案が絶えない。 こういうことが隠蔽されずに、表に出ていることは評価できる。 けれど中身は悲しすぎる。 「一人の死は悲劇だが、数百万人の死は統計上の数字に過ぎない」 スターリンが言ったとの証拠はないらしい。いちど聞いたら忘れない…

おかざき真里『&』

おかざき真里『&』(祥伝社、2010年‐) おかざき真里さんは、好きな女性漫画家のひとりだ。 昨年、あるひとのお薦めで『サプリ』を読んだ。それ以降、機会あるたびに買うようにしている。 こころを浮き彫りにするのが、とてもうまい作家さんである。 『&』…

碧海純一『法と社会』

碧海純一『法と社会』(中公新書、1967年)。 ローにいる友人のお薦めで読んだ。「法律関係を学びなおしたいんだけど、何から読むべき?」と訊いたさいの答えのひとつ。 【ざっくりと要約】 法は人間が造り上げた文化の一部として、言葉という抽象化能力と切…

こうの史代『夕凪の街 桜の国』

こうの史代『夕凪の街 桜の国』(双葉社、2004年)。 ふと、この漫画を思いだした。昨年のアニメ映画『この世界の片隅に』の原作者が、昔に描いた漫画だ。 ほんわかしたタッチから生まれる、原爆後の人々の日常。 原爆後を生きるひとは、どう生きていたのか…

福永武彦『草の花』

福永武彦「草の花」『福永武彦全集 第二巻』(新潮社、1987年)。 とりとめもない思考の渦を書き連ねているだけのブログに、コメントが付いた。「福永さんの『草の花』は京大生みんな読むべし」とのことだった。こういうお薦めは、ありがたい。 お薦めされた…

坂口安吾『堕落論』と、なにか。

無意味なことをして生きたい、という気もちが抑えきれなくなってきた。 講義に出るよりも、図書館に閉じこもって本を読んでいたい。就職のため勉強するよりも、京都の街中で思索にふけっていたい。誰かと会うよりも、下宿に閉じこもって自分と対話し続けたい…

京響「スプリング・コンサート」

京都コンサートホールに行ってきた。 京都交響楽団のスプリング・コンサートを聴いた。 このコンサートは京響の各パートの紹介を兼ねており、同時に年度のはじまりにクラシックに親しんでもらうことを目的としている。そのため、親しみやすいプログラムとな…

映画『素晴らしき哉、人生!』

フランク・キャプラ監督『素晴らしき哉、人生!』1946年。 いままでで、もっとも感動した作品である。 どうしようもなく、ラストで泣きつづけた。映画でこんなに泣いたのは、はじめてだった。 事実、アメリカ映画協会の感動した映画でトップに選ばれている。…

福永武彦『愛の試み』

福永武彦『愛の試み』(新潮文庫、1975年)。 池袋西口から立教大学にいたる道には、文庫本専門の書店がある。大地屋書店と言う。 個人でやっているから、「こういう本はありますか」と訊くと、すぐ答えが返ってくる。何回か通えば、馴染みとして顔を覚えて…

エッセー、あるいはある人のこと

ぼくは、自分の家が好きではなかった。 お彼岸のときは、親戚が集まってかならず勤行をする。大きな線香を立て、漢字の横のふりがなを機械的に音読する。金もあれば、木魚もあり、錫杖も使う。燈明を灯もし、飲食も供する。10数人で夜に行うから、隣の家から…

映画『秒速5センチメートル』

新海誠『秒速5センチメートル』2007年。 2017年3月17日深夜、テレ朝で新海誠監督『秒速5センチメートル』を放送していた。 高校時代に弟から薦められて以来、見る機会があると見てしまう。 欠点があった。かつての新海さんは、描きたい感情をそのまま描いて…

O・ヘンリー『1ドルの価値/賢者の贈り物 他21篇』

O・ヘンリー(芹澤恵訳)『1ドルの価値/賢者の贈り物 他21篇』(光文社[古典新訳文庫]、2007年)。 O・ヘンリーの短編集は、いろいろな版元から翻訳されている。また、青空文庫でも「最後の一葉」「賢者の贈り物」などを読むことができる(http://www.aozo…

ウィリアム・L・デアンドリア『ホッグ連続殺人事件』

ウィリアム・L・デアンドリア(真崎義博訳)『ホッグ連続殺人事件』(2005年、早川書房)。 【あらすじ・流れ】 ある町で、連続殺人事件が発生した。不可能としか思えない状況で、だれにも姿を見られずに完全犯罪を遂行していく。被害者はバラバラ。殺人を行…

吉本ばなな『キッチン』

吉本ばなな『キッチン』(角川書店、1998年) 大事な誰かをなくしたひとたちの短編集。3篇おさめられており、表題作は連作である。残るひとつは「ムーンライト・シャドウ」である。 初期の作品だということからわかるとおり、文章には拙さが見られる箇所もあ…

映画『ミッドナイト・イン・パリ』

『ミッドナイト・イン・パリ』 アカデミー賞脚本賞受賞。 わかりやすい流れ。いいアイデア、いいひねり方、いいオチのつけ方。 【あらすじ・流れ】 主人公のギルは、フランスに婚約者家族と旅行に来ていた。1920年代のフランスが最高だと思っていて、作家に…

映画『百円の恋』

『百円の恋』 日本アカデミー賞最優秀脚本賞受賞。 前半はとにかくつらい。つらすぎて正直見ていられない。見ていられないと思った人は、1.5倍速でみることをお薦めする。ここを乗り越えれば、すごいものが見られる。 中盤からの疾走感はすごすぎる。 打ち込…

映画『(500)日のサマー』

『(500)日のサマー』 身の周りで謎の流行をみせた映画。 「なんで()がついてるのかな」と思いつつ、なかなか見る機会がなかった。「どうせ恋愛映画でしょ」と思って敬遠していた。 しかしそのわりには、「キュンキュンした!」系の感想は聞かなかった。…

ロバート・シルヴァーバーグ『夜の翼』

ロバート・シルヴァーバーグ(佐藤高子訳)『夜の翼』(早川書房、1977年)。 ヒューゴー賞、アポロ賞受賞。 作りこまれた世界観。始まりと終わりが、とてもうつくしい物語だった。 【あらすじ・流れ】 この作品は、第1部、第2部、第3部に分かれる。 第1部:…

江國香織『泳ぐのに、安全でも、適切でもありません』

江國香織『泳ぐのに、安全でも、適切でもありません』(集英社、2005年)。 山本周五郎賞受賞作。 さらさらと、こころにしみこんでくる短編集である。私の一人称で、切り取られた世界の断片。 「うんとお腹をすかせてきてね」「ジェーン」「犬小屋」が好みだ…

映画『ララランド』

ララランド 現在公開中の映画である。先日のアカデミー賞で、今年度最多受賞作品。 それに恥じぬ作品だった。 ※上映中の作品は書かないようにしようと思ったのですが、自分のためのメモなので書いてしまいます。それに呼応して、あらすじは最後にもっていき…

映画『眼下の敵』

眼下の敵 戦争映画が好きだ。 極限状態での人間を見るのは、快感である。 初めて見る、眼下の敵を前にして、どうするのか。 【あらすじ・流れ】 第二次世界大戦時、アメリカ水上艦とドイツ潜水艦の戦い 水上艦の艦長は、元民間人である。自分の商用船がUボー…

映画『ユージュアル・サスペクツ』

ユージュアル・サスペクツ 1995年アカデミー賞脚本賞。 叙述ミステリーを、映像で描くとこうなるのか!と素直な驚き。すごい。 【あらすじ・流れ】 謎の黒幕であるカイザー・ロゼが、キートンを殺すシーンから始まる。船が炎上する。 それを影から見ていた生…

映画『レインマン』

レインマン 1989年脚本賞。 すばらしい脚本。ゾクゾクする。 【見どころ】 主人公の欠点は何か。欠点を生んだ原因は何か。欠点を補う装置は何か。どう行動が変わるのか。お手本のような作品。 【あらすじ・流れ】 他人は自分のために利用するものと思ってい…

宮下奈都『羊と鋼の森』

宮下奈都『羊と鋼の森』(文芸春秋、2015年)。 2016年本屋大賞受賞。 大学4年、オーケストラをやっている友人に誘われて、はじめて生のクラシックに触れた。 プログラムが本棚にある。合計三冊。 あと1週間と少しで、もう一冊加わる。大学生最後は、クラ…

三秋縋「明日世界が終わるなら」

三秋縋さんのツイッターをたまに見る。 そのなかで記憶にあるのが、 「明日世界が終わるなら何をする?」と聞かれたときに、 「会いたい人に会いに行く」と答えるのではなくて、 「会いたい人の会いたい人は私じゃないかもしれないから、結局何もせずに過ご…

映画『危険な関係』

『危険な関係』 1989年脚色賞受賞。 ドロッドロの主導権争い。 【あらすじ・流れ】 18世紀フランス社交界。 メルトイユ伯爵夫人とバルモン子爵が服を整える。戦闘服である。 ふたりは、処女のセシルとトゥールベル夫人を堕とすことに決める。実行役バルモン…

三浦しをんさんの短編プチ指南

三浦しをんという名前を聞いたことのあるひとは、多いと思う。小説家である。 名前に聞き覚えがなくても、『舟を編む』という本の題名は聞いたことがあるだろう。この小説は、本屋大賞を受賞しており、映画化もされた。さいきんノイタミナでアニメ版も放送さ…

映画『草原の輝き』

『草原の輝き』 1961年脚本賞。 最高である。 【見どころ】 男と女を阻む真の敵対者はなにか。 【あらすじ・流れ】 滝をバックに、車のなかで男女が絡み合う構図でスタート。 しかし女性はキス以上に進展するのを拒む。男性はやりきれない想い。 女性が性交…

映画『アパートの鍵 貸します』

『アパートの鍵 貸します』 1961年のアカデミー賞で、脚本賞を取っている。これから脚本賞受賞作品を見ていくことに決めた。 こういう映画が見たかったんです。 【見どころ】 男性を主人公に進んでいくプロットと、女性を軸に進んでいく裏プロット。どこがど…

『裸足の季節』

『裸足の季節』 http://www.bitters.co.jp/hadashi/theater.html 『シン・ゴジラ』と『君の名は。』を見て、映画館で見るのと、家で借りて見るのではまったく違うなと実感した。 このふたつを機内で見た人は、損をしたといっていいだろう。最初だけは映画館…

北方謙三『水滸伝』

先輩からのおすすめ本。 北方さんの『試みの地平線』を読んでから、「北方兄さん」と呼ぶことにしている。『試みの地平線』は、人生相談を集めたものである。悩める男どもの横っ面を、北方兄さんが本音で張っていくさまには、はっとさせられる。 10代~20代…

箱田ほか『認知心理学』(有斐閣)

箱田裕司・都築誉史・川畑秀明・荻原滋『認知心理学』(有斐閣、2010年) 有斐閣New Liberal Arts Selection (http://www.yuhikaku.co.jp/books/series_search/50)の一冊。本棚にあればいろいろと便利だ。 このレーベルからは心理学分野の本がたくさん出て…