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白くま生態観察記

上洛した白いくまもん。生態日記。

こうの史代『夕凪の街 桜の国』

こうの史代『夕凪の街 桜の国』(双葉社2004年)。

 

ふと、この漫画を思いだした。昨年のアニメ映画『この世界の片隅に』の原作者が、昔に描いた漫画だ。

 

ほんわかしたタッチから生まれる、原爆後の人々の日常。

原爆後を生きるひとは、どう生きていたのか。臨場感がある描写である。

 

残念ながら、「桜の国」の中身は思いだせない。漫画は実家に置いてきてしまった。

 

 

「夕凪の街」のクライマックスは、引き裂かれるような思いが描かれる。

主人公の女性は、こころ惹かれる男性から想いを告げられる。嬉しく思う。しかしキスをされる直前、原爆のときを思いだしてしまう。

――あのとき、わたしは自分のことに必死で、助けを求めるひとを見て見ぬふりをした。他人を見捨てて、自分勝手に生き延びた。こんなわたしが、しあわせになっていいんじゃろか。しあわせにのうのうと生きる権利があるんじゃろか。

こう思った主人公は、キスを拒む。ふたりは愛し合っているが、愛し合えない。

 

なんということだろうか。

目の前で死んでいくひとを見捨てた自分。しかもそれを忘れていて、こういうときだけ思いだす自分。しあわせになる権利など、ない。自分を責める。

いま、自分を責めても何の意味もないのに。それがわかっていても、自分を責めるのだ。

 

こころに愛を秘めながら、目の前にしあわせがありながら、孤独を選ばざるをえない。

 

主人公は、原爆の後遺症が出て、死ぬ。