海がきこえる
『海がきこえる』
氷室冴子さんの原作小説を、ジブリが映画化した。はじめて観る。
【感想】
ジブリもこういうの撮るのか。ストーリー重視で、なんらかの目に見える困難が立ちふさがるものばかりだと思っていた。
『海がきこえる』はストーリー性を目指さず、ひたすら感情を描写することに特化していた。感情を描くときには、淡々とシーンを追っていけばいい。おおきく盛り上がる箇所はないかわりに、「自分にもこういうときあったなぁ」という感覚をもたらす。しみじみとする映画だ。
音楽がいい。
描かれる感情は、思春期特有の「好きなんだけれど、好きではないと思い込む」「気になるんだけど、気にならないふりをしている」というもの。大人になると、「なんであのとき、あんな小さなことでいっぱいだったんだろう」って思いませんか。ぼくは思います。
その感情を、大人になって振り返るところまで描かれているのがミソ。
「ああ、好きだったんだなあ。彼女ともっと話したかったんだ」
終盤で、静かに、しかし鮮烈に描かれる描写はとてもよいものだった。『君の名は。』はラストをオマージュしてる。
そういう感情を感じたことがないなぁという人には、退屈なだけなのでお薦めしません。