セネカ『人生の短さについて』
セネカ(中澤務訳)『人生の短さについて他2篇』(光文社古典新訳文庫、2017年)。
とりあえず表題作だけ読んだ。
多くの人の人生は、他人のために浪費されるのみである。そうした人生は他人を中心に回るから、多忙を極め、人生は短い。
いっぽうで自分の人生を生きている人にとっては、人生は長く充実している。人生を、自分に取り戻すことが大事である。
ある研究者の先輩と話したとき、「学生のうちは自分の関心と社会の関心をすり合わせなくていいんだよね。ぜんぜん重ならなくていいの。好きにやっていい。それが学生の特権。でも社会に出るときには、自分と社会の関心が重なり合う場所を探さないといけない。そうじゃないとやっていけない」といっていた。
そのときも、概念上は理解できた。でも最近は、身に染みて理解できる。どこかで重なるところを見つけ出さなければ、自分のこころをすり減らす一方であり、こころの弾力が消え去ってしまう。
なにごとも「自分を知る」という問題に行き着く。世界で一番長く過ごしてきた人でありながら、外からは観察できない他人。もっとも身近な他人、自分。
『「自分らしさ」の構造』では、その見つけかたについても触れていたなぁと。