白くま生態観察記

上洛した白いくまもん。観察日記。勝手にコルクラボ

稲垣栄洋『弱者の戦略』

稲垣栄洋『弱者の戦略』(新潮選書、2014年)。

 

一時期、民間の就活をしていた時期があった。某出版社の説明会ESに「最近読んだおもしろい本を推薦してください」という問いがあった。フォルダを探していたら、出てきたので挙げておく。

 

 

体の大きなウシガエルのオスは、大きな声で鳴けるから、声が遠くまで響いてメスと結ばれやすい。だからその遺伝子が多数を占めて、ウシガエルは大きな個体しかいない。単純な論理だ。

しかし自然界だと小さなオスもたくさん存在する。矛盾だ。すなわちこれは、体が大きいものが「強い」個体であるということの裏で、体が小さいという「弱い」遺伝子もたくさん生き残っていることを示している。

そうした弱い個体・種は、どうやって生き残ってきたのか。これこそが「弱者の戦略」である。筆者によると「すべての生き物は勝者である」。考えてみれば当然だ。永い生存競争に生き残ってきたのだから。

本書は成功者としての弱者に焦点をあて、その戦略をさまざまな角度から明らかにしていく。擬態する植物? 冬眠ではなくて夏眠? 短い寿命の合理性? 食べられることが成功? などなど、普段は死角となっている観点から生物界を解き明かした良著である。