TED Guy Winch “Why we all need to practice emotional first aid”
TEDというプレゼンテーションを知っているだろうか。
NHKが「スーパープレゼンテーション」と銘打って、英語(+日本語字幕)と日本語で放送している、アメリカのプレゼンテーション・ショーである(註:2018年に番組は終了した。本家は残っている)。
TEDのサイトには日本語訳のスクリプトもあるから、誰でも気軽に世界トップのプレゼンを見られる。
そのなかから、ひとつ紹介したい。
Guy Winch“Why we all need to practice emotional first aid”
https://www.ted.com/talks/guy_winch_the_case_for_emotional_hygiene/transcript?language=ja#t-182207
ウィンチは、「小さな子供でも身体が傷ついたときの対処法は知っているのに、我々大人でさえ精神が傷ついたときの対処法を知らないのはなぜだろう」と疑問を投げかける。たしかにケガをすれば、だれでも消毒をして絆創膏を貼る。もっと言えば医学的に、いま消毒は推奨されない場合もあるし、絆創膏も適さないときがあるのも知っている。まったく意識していないのに、誰でも応急処置を知っている。
なのに精神が傷ついたときの対処法は、あまりにも知らない。たとえば孤独感にさいなまれたとき、失敗して無力感におちいったとき、挫折してどん底にいるとき、自尊心が損なわれ不安が絶えないとき、最初にどうすればいいのか知らない。そのまま放置して治るのをまつか、悪化し続けて医者にかかるか。この二択しかない。自己流で対処する人もいるけれど、もっと科学的な対処法が求められている。
ウィンチは、この状況を打破するために本を書いた。Guy Winch, 2013. Emotional First Aid, USA: Plume.である。新しい精神医療の知見を活かしながら、誰でも実践できるように応急処置方法がまとめられている。拒絶や孤独感、自尊感情の低さなど、場面別の処置方法が載っている。邦訳されていないのが残念だ。
このプレゼンテーションでは、反芻思考を中断して自分を客観視するために、2分間だけ気を紛らわせることを提唱している。
反芻思考とは以下のものである。上司に怒鳴られたり、他人の前で恥をかいたり、大きな失敗があったりしたとき、人はその場面を何回も思いだして、不必要なまでに自分を消耗させる。落ち込んだり、怒りが沸いてきたりして、ほかのことに使える時間を奪って、自分で自分を傷つける。
そんなときに、たった2分だけ、違うことで頭をいっぱいにしてみる。そうすると、いままでの反芻思考から抜け出て、すこし客観視できるようになるというのだ。これを続けると、効果があるという。
これを知ってからできるだけ実践するようにしている。
しかしすでに反芻思考にとらわれているときに、たった2分間でも違うことを考えるのはむずかしい。
そこでできれば身体を動かすことにしている。近くのコンビニまで、息がきれるスピードで走る。トイレの便座に座らず、空気椅子で限界まで耐える。
たいていはそうもいかないので、手元にスマホがあるなら、単純作業のゲームで、限界までスピードをあげてやるとか。面白いサイトを見つけておいて、強制的に笑いつづけるとか。酒を飲んで夜中にしていたラインをみて、バカなことやってるなと恥ずかしくなるとか。
なんでもいい。頭を使わず、けれど頭の思考領域をいっぱいにしてしまう何かをあらかじめ見つけておくだけでいい。たった2分で、反芻思考から抜け出せる(気になる)。
このプレゼンの元本を買った。
6月末まで時間がなくて、時間をみつけては読んでいる。来月まとめたい。いろいろな場合の対処法が載っている。