妙顯寺
京都の拝観料は高い。そこらの社寺に入ろうと思えば500円かかるし、有名なところだと700円もかかる。強気な値段設定だ。毎週のように観光しているので、硬貨が財布から消えていく。500円に見合うものがあれば文句ない。けれど、実際になかに入ってみると、アレこんなはずじゃなかったと落胆することもある。正直、もう来ないぞ……というのもある。
妙顯寺は良心的な値段設定。300円で、とてもコスパがよい。
本堂がすごい。磬子(けいす。読経の最中に僧侶が叩くあのおっきな鐘)を鳴らすことができるし、多くの仏教彫刻を間近で見られる。天井から垂れ下がる金色の幢幡(どうばん)も全周囲から確認できる。
お堂特有の静かな緊張感のなかに、たったひとりでいられる。このお寺は穴場なのだ。誰もいない。ごぉぉぉんと鳴り響くお堂で、静かに手を合わせる。
庭も悪くない。勅使門を入ったところの庭は、枯山水がある。
滝から流れ落ちた水が海に注いでいる。海は凪いでいる。それをあらわすために、砂紋は描かれていない。右手奥の枝垂れ桜の存在感は無視できない。桜の季節にはいいものだろう。
坪庭には竹が植わっている。なんだろう、坪庭はいいものだ。周囲を建物に囲まれた狭い空間に、ほっと一息いれるように出現する。光がうまく射し込んだときには陰と陽が強調される。そのバランスを、竹の葉が揺るがす。風がすこしだけ吹きぬける。
無鄰菴の坪庭にも竹が植わっていたことを思いだす。たぶん坪庭だけを集めた写真集があるな。三井家別荘の坪庭には、石が置かれていた気がする。写真集、ほしい。
いちばん奥には曲水の庭がある。ただし水は入っていない。ここの松がよい。赤松と黒松。赤松の枝の曲がり具合がなんともいえない。
これで300円か。もっと取ってもいいんじゃないか。紅葉や桜の季節にまた来たい。