白くま生態観察記

上洛した白いくまもん。観察日記。勝手にコルクラボ

普段着の着物

祭りに行った。正面のステージでバンドが演奏する。色のきつい光線が舞って、音が鼓膜に響いてくる。

その喧騒の外側で、着物の女性が慣れた手つきでタバコを取りだした。火をつけて、うまそうにひと息吸って吐き出す。そうやって喧騒を眺めている。横顔が妙に画になっている。ぼんやり遠くを眺める、カシニョールが描いた女性みたいな感じである。とてもいい。

ただタバコを吸っているだけなのに、なぜこうも心が動かされるのか。

着物とタバコが正反対のものだったからだ。着物をハレの日のものだと思っているなら、タバコは吸わないだろう。タバコの臭いが着物についてしまう。大事なときに使えないかもしれない。

普段から着物を着ているから、いつもと同じようにタバコを吸っている。彼女にとって着物と洋服はどちらも普段着なのである

同じことはほかにもある。

花街をほんのすこし離れたところで、着物の女性が大きな風呂敷を抱えて歩いていた。重さに身体が傾いていて、一歩踏みだすのも大変そう。顔が物憂げにゆがんでいる。すこし汗ばんで、息もあがっていた。

着物で重たいものを運ぶなんて東京ではありえない。ハレの日にしか着ないのだから。でも、京都の街中には日常生活で着物を着ている人がいる。

 

外見は、自分がかかわっている共同体を映しだす。

いろんな人が入り混じってる街、京都。