白くま生態観察記

上洛した白いくまもん。観察日記。勝手にコルクラボ

おかざき真里『かしまし飯』

「どんなひとが好きなの」と訊かれると、いつも回答に迷う。

 

迷って迷って開き直って「好きなひとが好きなんだよ。好きってそういうもんでしょ」と言いたくなるけれど、でも目の前のひとから求められているのは、そういう回答じゃない。

話のタネになる、拡がりのある回答を求められている。

どうしよう、どうしようと考えつづけて、頭をギュルンギュルン働かせる。しかし、どことなく恥ずかしい話題に、脳みそは空回りしていく。

焦る。あまり間が空いてもいけない。空気が滞ってしまう。

必死に考えて「笑顔がかわいいひとかな」と言う。それらしい言葉をひねりだせて、ほっとする。乗りきったぞ、さて、どう返してくるかな。

「それ何にも言ってないじゃん笑。好きになったら、かわいく見えるでしょ。やりなおし」

一瞬でバッサリ切られる。あーあ、失敗だったか。考え直さないと。そうやって話してる笑顔がかわいいんだけどな。こいつは何も、わかってない。

 

話のうまいひとはいいな。うらやましい、と思う。場を刺激するひと言、想像もしないひと言。なんでもいいけど、場の空気をうまく乱して、新たな話のタネになるひと言。そういう言葉をポンポン放っていくひと、すごいなぁ。

こういうとき、適当に答えられたらな。話がうまくないことはわかってる。内省的なこともわかってる。けれど、せめて、一緒にいてくれるひとを失望させない程度にキャラを演じたい。

たのしい飲み会なんだから、みんなでたのしく過ごしたい。

 

みたいなことを、ここ数年ずっとやってきたのだけれど、おかざき真里『かしまし飯』第1巻(祥伝社、2017年)を読んで、これだっ! と思った。登場人物のあいだにただよう雰囲気が最高なのだ。一緒にあたたかいご飯を食べるということが、どれだけひとを救うだろう。その瞬間と関係性が、どれだけありがたいことか。

 

「一緒にご飯を食べたとき、おいしいねって笑いあって、ほっとできるひと」

 

「どんなひとが好きなの」という回答にたいして、ぼくはこれからそう答える。

なんというか、そういう漫画だった。