おかざき真里『&』
おかざき真里さんは、好きな女性漫画家のひとりだ。
昨年、あるひとのお薦めで『サプリ』を読んだ。それ以降、機会あるたびに買うようにしている。
こころを浮き彫りにするのが、とてもうまい作家さんである。
『&』を2巻まで買った。つるりとした凹凸のあるワイド版。懐かしい手触り。『サプリ』と同じだ。
やはり、こころの描写がすばらしい。
『サプリ』よりも、冒頭から引きこまれる物語だ。
なぜか。物語の推進力がはっきりしているからだ。
26歳処女が主人公。45歳のオジサンに恋をしてしまう。
それでいて主人公を好きな後輩男子と、ひとつ屋根の下にいる。
この構図だけで、どうなるのか先を読みたくなる。おかざきさんだから、読者のこころを締めつけてくることは確実である。
もうひとつ。それぞれのキャラクターの「闇」が、ずっしりと響いてくるから。
主人公はなぜ人に触れられるのが嫌いなのか。
45歳のオジサンは、なぜああも真に迫って脅すことができるのか。
後輩男子は、主人公と過去になにがあったのか(なぜ主人公は意識していないのか)。
過去が明かされていく描写に引き込まれる。
この2点は『サプリ』にはなかった。この要素を前面に押し出しながら、物語の推進力として使っているところに構成上の違いを感じる。
こころのひだを描いていく作風からすれば、かならずしも必要ではない。『サプリ』も楽しめた。
それでも、推進力があるほうが先を読みたくなるなぁと、いまは思う。10年後くらいになると、こういう設定は鼻につくのかもしれないけれど。