2018-04-01から1ヶ月間の記事一覧
彼女は、テニス部に入っていた。部活のある日には、ヨネックスのあの大きなバッグを背負って予備校に来ていた。 テニスは高級なスポーツの感じがした。イギリスの上流階級がやるもの、みたいなイメージがあった。ぼくの高校でもかっこいいやつだけがテニスを…
陸上の長距離をやっていたとき、タイムが伸び悩んだ時期があった。 男子校の高校2年のときである。ぼくは同学年で2番目に速かった。一番速いMは関東大会に出るくらいだった。ぼくより遅く入部したTもどんどん速くなっていて、抜かされるのも時間の問題だった…
映画『ゴースト』 無言の時間に、ありったけの愛を詰めこんだ映画。 物語構成は単純である。 同棲しはじめたカップルのうち、彼氏が強盗に殺されてゴーストになる。一時的に逃げた強盗は彼女も殺そうとする。死んだ彼はなんとか彼女を救おうとするけれど、ゴ…
一昨年の春から、「大丈夫?」と聞くのをやめている。 たいていの人は、それほど親しくない人に対して「大丈夫じゃない」と言わない。私は限界です、いっぱいいっぱいでやるべきこともできません、なんて不名誉なことを言うだろうか。言うわけがない。 だか…
菫(すみれ)の花を見ると、「可憐だ」と私たちは感ずる。それはそういう感じ方の通念があるからである。しかしほんとうは私は、菫の黒ずんだような紫色の葉案を見たとき、何か不吉な不安な気持ちを抱くのである。しかし、その一瞬後には、私は常識に負けて…
松任谷由実「白い服、白い靴」 http://j-lyric.net/artist/a000c13/l000e31.html 『マツコの知らない世界』 うぶな男子大学生がユーミンを紹介する。 その一場面。恋愛の教訓として「白い服、白い靴」を取り上げて説明を始めた。 マツコさんが遮って「ねぇ、…
嫌いなものを言うのは、怪しげな爽快感があってクセになる。 ぼくは、葬式で「とてもいい人だったよね」とだけ言う人が嫌いだ。 故人と一緒に過ごせば、良いところよりも、悪いところや不器用なところのほうが多く見えてくるはずなのに、いいところしか言わ…
関西に来てはじめておにぎりを買う。 棚を見ながら、関東に比べてほんの少しおにぎりの値段が高いと思った。なぜだろう、気のせいかなと思いながらツナマヨと昆布を選んだ。 コンビニおにぎりの海苔を合体させて、かぶりつく一瞬はクセになる。ビニールのつ…
目の前にシカがいた。 鴨川である。 おお、こいつが噂のシカか、と思った。シカが出るとは聞いていたけれど、ほんとうにシカが出るとは信じられなかった。 もさもさと中州で草を食んでいる。身体は小さい。 かわいいなぁと思っていたら、ぼくの後ろを自転車…
『アナと雪の女王』は、日本では主題歌が一人歩きしてしまい、内容が伝わっていない悲しい映画だ。 主題歌の「let it go」は、NHKでも取り上げられるほどの露出になった。どうも「ありのままの自分を肯定する動き」「自分の感情を解放する喜び」がウケている…
イ・ヨンド『ドラゴン・ラージャ』を小学生のときに読んでいた。ファンタジー作品で、民族ごとの世界観・宗教観にしびれていた。 いまでも憶えている話をひとつ。 手のひらいっぱいのおはじきを地面に投げ落としたとする。おはじきはバラバラに散らばって、…
「言葉にしてくれないと、わからないよ」と言われたことがある。 思いを口に出すのは恥ずかしかったり、うまく言えない気がしたりして、口をつぐんでしまう。すれ違いが生まれて、どんどん積もっていって、ある一点で爆発する。気づいたときには、もう手遅れ…
映画『フォレスト・ガンプ』 1950年代~1970年代、アメリカが大きく揺れ動いた時代を、ただまっすぐに駆け抜けた青年の映画。けっこう好き。 主人公のフォレスト・ガンプには、自閉傾向があった。言葉を文字通りにとらえて、ルールには愚直で、周囲の空気は…
2018年春はアニメが豊作で、有名どころがたくさんある。 キャプテン翼、ルパン三世、ゴールデンカムイ、ゲゲゲの鬼太郎、シュタインズゲート、東京グール、ピアノの森、メジャー・セカンド……。ほんとにたくさん。 メジャー・セカンドについて。 メジャー(フ…
LGBTが気持ち悪い人の本音 「ポリコレ棒で葬られるの怖い」 - withnews(ウィズニュース) withnewsはしっかりした記事を出していて、結構好きな媒体である。 かしこまった場では話せないけれど、人間ってこういうの読みたいよね、みたいな記事を的確に出し…
岡田暁生『音楽の聴き方』(中公新書、2009年) ぼくは、ツイッターで「芸術を語る視線を手に入れられる本」と評した。著者の実感とあわせて、思考の軌跡をたどれる本である。素晴らしい。 印象的なエピソードがある。 著者がドイツの友人宅を訪問したときの…
片方の男が深刻そうな顔で話しだす。 「好きな人がいないんだよね。いや付き合っている人がいないってわけじゃなくて、付き合っても、なんか『すき』という気もちになれないというか、こんなのが好きっていう感情なのかなと思ってしまう」 もう片方の男は、…