2017-12-01から1ヶ月間の記事一覧
三田誠広『いちご同盟』(集英社文庫、1991年) 『君嘘』は、『いちご同盟』へのオマージュだった。 高校生のとき、20歳には死んでそうだなと思った。 大学に入って、30歳くらいで死ぬなと思った。 体調を崩した時期には、残りの人生は消化試合だなと思った…
漢詩を語ることで、『君嘘』に迫る。 李白の「黄鶴楼にて孟浩然の広陵に之くを送る」。漢文の教科書で読んだ。 七言絶句である。縦書きのものを、横書きにした。 故人西辞黄鶴楼 煙花三月下揚州 孤帆遠影碧空尽 惟見長江天際流 高校生のとき、この詩を読んで…
鴻上さんの『ロンドン・デイズ』は、演出家のロンドン留学をつづった日記である。 イギリスの演劇学校の授業風景がわかっておもしろい。また鴻上さんの目を通すと、世界はこんなふうに見えるのかと感心する。 演技練習の授業。 新しい女の先生が自分のことを…
学部の国際法は、1,2限の連続講義だった。内容はもう覚えていない。 けれど、忘れられない話がある。 講義は女性が担当していた。何かを説明している最中、突然、マイクで問いかけてきた。 「みなさんは、好きだった子の名前を、自分の名前と組み合わせて悶…
「きみのいう、愛っていうのは、具体的にはどういうこと? 何か一方的な救いのように感じるのだけど。そう思う原因は?」 こう問われたら、ぼくは、即座に答えられる。 「愛っていうのは、『ひとりじゃないんだよ』と実感させてあげること。相手に、自分自身…
蛙化現象、という話がある。 「好きな人ができても、その人から好意を向けられると、気持ち悪く感じてしまう」現象をさす。 たぶん、このブログが一番いい。実際の声を拾いながら、理論とも結びつけている。読んで衝撃を受けた。 『好きな人から好意を向けら…
ラヴェル「亡き王女のためのパヴァーヌ」 冬。 寒さが身体にしみて、心まで冷えていく。 その寒さは、逆説的に、心の底の暖かさに気づかせてくれる。 その暖かさは、人が与えてくれたものだ。 誰かが自分を愛してくれていたんじゃないか。誰かがいまも愛して…
齊藤亜矢『ヒトはなぜ絵を描くのか』(岩波書店、2014年) 岩波書店『図書』2017年12月号で、齊藤さんの文章を読んだ。 「サルを追いかけていたら、崖から落ちて背骨を骨折した。サルを追いかけて? と笑われることも多いが、まったく笑いごとではなかった」…
ハリーポッター・シリーズで、大きな謎があった。 なぜ「エクスペリアームス(武装解除)」の呪文は、さまざまな効果をもつのか。 あるときは相手の杖だけを吹き飛ばしたり、あるときは相手の杖を術者のほうに飛んでこさせたり、またあるときは相手ごと吹き…
今年読んだ物語とか。ベスト3と言いつつも、ひとつしかなかったりするのはご愛敬です。 全部門トップ おかざき真里『阿・吽』(小学館) 絵に吸い込まれて、呼吸がとまるという稀有な体験ができます。はーと息を吐ききったとき、口から出るのは「すんげぇ」…
鴻上尚史『恋愛王』のなかに、アガサ・クリスティ『春にして君を離れ』について触れたエッセーがある。その内容に触れながら、彼は言う。 彼女の夫は、おそらく彼女を愛しているのです。が、同時に、彼女の精神のある部分に対して、激しく憎んでいるのです。…
実家に犬がいる。 来年春で15歳の、豆しばおばあちゃんだ。おばあちゃんだけれど、散歩のときには飛んだり跳ねたり走ったりする。 ちっこくて、ふわふわで、ちょっとごわごわしてて、ほんのりと動物臭い。 そして、とてもあたたかい。 ぎゅっと抱きしめたら…
忘年会に出た。 先生と一緒に院棟で飲む。 知らない人も、知っている人もいる。 「野望を話せ」と言われ、自己紹介が始まった。 ぼくは、前の人にならって志望先を述べた。 二重のウソである。 その志望先に行く気はない。 たとえ志望先に行く気があっても、…
深町秋生『果てしなき渇き』(宝島社、2005年) おすすめされた。 読みながら、こういう本をおすすめするひとは、どういう人間なのかを考えていた。 暴力につぐ暴力が延々とつづられる。具体的で肉感のある描写だから、読者は暴力をする側になったり、される…
『ボールルームへようこそ』23話 アニメ版が原作を超えて、ついにちーちゃんと多々良くんペアの結末を描いた。 多々良くんは臆病で、自尊感情のないタイプだった。だから、相手の女性にあわせてリード(ダンスにおける男性の役割。女性を導くこと)をしてい…
「大切な情報をたくさん得ているかわりに、どうでもいい情報の洪水が、私の脳にはがんがん入ってきているのだ。 それを偶然にも一時的に中断してみたら、頭の中がすっきりした。どうでもいい情報はやっぱり害なのだ、とあらためて思った瞬間だった。どうでも…
人は見たいものしか見ない。目の前にあっても、ちゃんと見ることができない。 と、よく言われる。正しい。 しかし、ぼくはこうも思う。 目の前のものをそのまま見るには、どうしたらいいのか。 見ることができないのだから仕方ないと諦めるのではなく、でき…
毎週、NHK『ドキュメント72時間』を見ている。 どうしても頭から離れない女性がいる。 禅寺体験の回。参加していた女子大生だ。 警察官になることが彼女の夢だった。そのために大学に行って、自動車免許もとって、たぶん身体も鍛えていた。 しかし、車を運転…
高橋留美子『めぞん一刻』文庫版、全10巻(小学館) 愛するひとを突然失った人間は、ふたたび誰かを愛せるようになるのか。 結婚した直後に、結婚相手をなくしたらどういう状態になるか。直後の反応ではなくて、心の底に刻みつけられる刻印を想像したい。 『…
居合の動画をとった。 居合をはじめて2か月の動画では、ぜんぜん居合の動きになっていなかった。カクカクとした動き、不自然な重心の位置、風切音のない刀の振り、ふわっとした納刀……あげていけば、いくらでもある。ひどい。ここまでひどいと、ほほえましい。…
石塚真一『Blue Giant(ブルージャイアント)』全10巻(小学館) この漫画をひとことであらわせと言われたら、何と言うか決めてある。 安全圏にいることをゆるさない漫画だ。 ぼくらは物語を読者として読む。物語世界と現実世界は断絶したものだ、という前提…
ロバート・レッドフォード『普通の人々』(1980年) ひさしぶりに泣いた。大泣きだった。鼻がグシュグシュになった。『素晴らしき哉、人生』(1946年)以来の号泣かもしれない。 人間の心を浮かび上がらせていく丁寧な描写に驚く。すばらしい。 この映画を見…