映画『レインマン』
1989年脚本賞。
すばらしい脚本。ゾクゾクする。
【見どころ】
主人公の欠点は何か。欠点を生んだ原因は何か。欠点を補う装置は何か。どう行動が変わるのか。お手本のような作品。
【あらすじ・流れ】
他人は自分のために利用するものと思っている主人公。その場しのぎで嘘をついても悪気なし。
ゆがんだ価値観の背景には、父親に見捨てられたと感じてから、愛を感じられないことがあった。
父親の死で巨額の遺産=300万ドルが手に入ると思ったが、遺言状の内容で主人公には残されないことが判明。
これに不服な主人公が相続先を探すと、いままで存在を知らなかった兄がいたことが判明する。兄は精神病院にいた。サヴァン症候群であり、社会生活は難しい。その分、記憶力と計算力は抜群である。そこの先生が後見人として管理していた。
主人公は、兄のレイモンドを人質に連れ出して、遺産をよこせと交渉することにした。裁判に持ち込むぞと。半分の150万ドルはこっちのものだ。
主人公は、兄の世話を恋人に押し付ける。しかし恋人は、他人を利用する態度に嫌気がさし逃亡する。主人公は、150万ドルをひとりで世話せざるを得ない状況に。
兄は、飛行機に乗れない。高速に乗れない。食事は曜日ごとに決まったものしか食べない。決まったテレビを見なければならない。雨の日は外に出ない。
これらに対応する主人公は、自分の事業のため、普通の道で3日かけて大陸を横断する必要にかられる。事業はパー。
その途中の宿で、風呂の水を張るときに、兄が奇声を上げる。
驚いた主人公は、兄のつぶやきから衝撃の事実に行きつく。
兄はレインマンだった。
主人公の生まれたときの家の様子を、完全に記憶していた。
主人公は自分に対する親の愛を確信する。兄の記憶を通して。兄への愛が芽生える。靴を脱がせた。
主人公は恋人に謝る。他人を利用するだけの存在とは見なくなった。
そこから兄をさげすむだけではなく、兄の美点を生かして一緒にカジノで財産をあげる。
最後は兄も主人公を「メインマン(親友)」と認めて、冗談をいうように。
主人公は兄を金とは交換しない。「つながってるんだ。たった一人の肉親を、どうして取り上げようとする」
【感想】
完璧な脚本である。すばらしい。
家族愛を感じずに育ち、他人に敬意をもてない主人公が、サヴァン症候群の兄と旅をすることで、特有の記憶力に保存された家族愛に触れ、兄弟でこころが通じるようになる。そうなったとき、主人公は、他人に嘘をつかず経緯をもてるようになった。