共感する、ということ。
相手に共感することが大事というけれど、共感するにはどうすればいいのだろうか。相手の何に、どのように共感すればいいのか。
話し方の本で言われるように、うんうんとうなずいたり、相手の言葉を繰り返したり、要約して返したり。こんなふうにすることが共感するということなのか。
たぶん、そうじゃない。
相手の裏の感情を言い当てること。これが共感したと相手に実感させることなのだ。
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ぼくは友達の相談にのっていた。
彼女は婚約を決めたばかりで、夫による無神経に怒っていた。夫が泊まりでキャンプに行くと言ってきたらしい。彼女が「誰と行くの」と聞いたら、悪びれることもなく女性もいるよと答えられた。
「婚約決めたばかりの時期に、女性もいるキャンプに行くってどういうこと? 少なくともキャンプに行くか決めるまえに、私に相談するでしょ」。
彼女はこう思ったけれど、何かそれを言うのも癪だなと感じた。自分の胸にしまって、ぼくに言ってきた。どうしたらいいんだろう……
なるほどねと言って、しばらく考えてこう返した。
「きみは彼がキャンプに行くことに怒っているんじゃなくて、自分が大事にされていないように感じたから怒っているんだね。不安でいっぱいなんだ」
彼女は「そう。そうなの!」と答えた。「女性とどっかに行くときは事前に言うって約束したのに。なんか大事にされてないかもって。考えすぎだとは思うんだけど」
ぼくは「大丈夫だよ、きみは大事にされてるよ。彼はちょっと考えるのが苦手なだけで、『キャンプに行くまえに言ったのに、なんで不機嫌になるのかわからない』って思ってる。すれ違ってるだけだよ。
不安が残るなら、不安をことばにして言えばいい。彼も受けとめてくれるよ。きみは彼を信じてるんでしょ」
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感情の動きは、キャンプに行くと言われた⇒怒ったという単純な動きはしない。
不安を感じやすい世界観をもっているところに、キャンプに行くと言われて、不安が強く感じられて、しかし同時に彼を信じているから、不安を感じてしまう自分が嫌になって相手に告げられなくて……
こういうのがぜんぶ合わさって、もやもやして怒りとして感じられる。
きみは、大事にされているかどうかが不安なんだね。
相手に共感するというのは、怒ってるんだねと共感するんじゃなくて、怒りのもとの不安に共感することなのだ。