白くま生態観察記

上洛した白いくまもん。観察日記。勝手にコルクラボ

執筆

関西のおにぎり

関西に来てはじめておにぎりを買う。 棚を見ながら、関東に比べてほんの少しおにぎりの値段が高いと思った。なぜだろう、気のせいかなと思いながらツナマヨと昆布を選んだ。 コンビニおにぎりの海苔を合体させて、かぶりつく一瞬はクセになる。ビニールのつ…

京都市は田舎

目の前にシカがいた。 鴨川である。 おお、こいつが噂のシカか、と思った。シカが出るとは聞いていたけれど、ほんとうにシカが出るとは信じられなかった。 もさもさと中州で草を食んでいる。身体は小さい。 かわいいなぁと思っていたら、ぼくの後ろを自転車…

『アナ雪』の不幸な解釈と、ほんとうの「ありのまま」について

『アナと雪の女王』は、日本では主題歌が一人歩きしてしまい、内容が伝わっていない悲しい映画だ。 主題歌の「let it go」は、NHKでも取り上げられるほどの露出になった。どうも「ありのままの自分を肯定する動き」「自分の感情を解放する喜び」がウケている…

カオスとコスモス

イ・ヨンド『ドラゴン・ラージャ』を小学生のときに読んでいた。ファンタジー作品で、民族ごとの世界観・宗教観にしびれていた。 いまでも憶えている話をひとつ。 手のひらいっぱいのおはじきを地面に投げ落としたとする。おはじきはバラバラに散らばって、…

高次の会話

「言葉にしてくれないと、わからないよ」と言われたことがある。 思いを口に出すのは恥ずかしかったり、うまく言えない気がしたりして、口をつぐんでしまう。すれ違いが生まれて、どんどん積もっていって、ある一点で爆発する。気づいたときには、もう手遅れ…

LGBTが気持ち悪い人の本音 「ポリコレ棒で葬られるの怖い」news

LGBTが気持ち悪い人の本音 「ポリコレ棒で葬られるの怖い」 - withnews(ウィズニュース) withnewsはしっかりした記事を出していて、結構好きな媒体である。 かしこまった場では話せないけれど、人間ってこういうの読みたいよね、みたいな記事を的確に出し…

喫茶店

片方の男が深刻そうな顔で話しだす。 「好きな人がいないんだよね。いや付き合っている人がいないってわけじゃなくて、付き合っても、なんか『すき』という気もちになれないというか、こんなのが好きっていう感情なのかなと思ってしまう」 もう片方の男は、…

悲しいから泣きますか――謎のプリンス

塾講師をしていたころ 「悲しいのに泣けない人っているけど、感覚がわかんない。わたし卒業式とか号泣しちゃう」 と言っている人がいた。同じ教室に「悲しくても泣かない」という人もいれば、「そもそも泣かなくね。なんで泣いてんの。みっともない。」と言…

日吉でやらない卒業式

今年の慶應は、卒業式を日吉でやらないらしい。あの体育館が改修工事中で使えないから、パシフィコ横浜を使うとのこと。 例年なら、卒業生は図書館前の諭吉像をバックに卒業写真をとる。卒業式終わって○○時に集合ね、みたいな約束をしておくのだ。 卒業式が…

片足のないハト

片足のないハトがいた。 公園のハトたちは、クックと首を揺らしながら独特の歩きかたで地面に落ちたエサをさがす。エサを見つけたら、さっと地面をつついて食べる。そしてまた頭をあげてエサをさがす。 そうしたハトたちのなかに一羽だけ妙な動きをしている…

名前

学部の国際法は、1,2限の連続講義だった。内容はもう覚えていない。 けれど、忘れられない話がある。 講義は女性が担当していた。何かを説明している最中、突然、マイクで問いかけてきた。 「みなさんは、好きだった子の名前を、自分の名前と組み合わせて悶…

希望とは、絶望を分かちあうこと

「きみのいう、愛っていうのは、具体的にはどういうこと? 何か一方的な救いのように感じるのだけど。そう思う原因は?」 こう問われたら、ぼくは、即座に答えられる。 「愛っていうのは、『ひとりじゃないんだよ』と実感させてあげること。相手に、自分自身…

蛙化現象

蛙化現象、という話がある。 「好きな人ができても、その人から好意を向けられると、気持ち悪く感じてしまう」現象をさす。 たぶん、このブログが一番いい。実際の声を拾いながら、理論とも結びつけている。読んで衝撃を受けた。 『好きな人から好意を向けら…

亡き王女のためのパヴァーヌ

ラヴェル「亡き王女のためのパヴァーヌ」 冬。 寒さが身体にしみて、心まで冷えていく。 その寒さは、逆説的に、心の底の暖かさに気づかせてくれる。 その暖かさは、人が与えてくれたものだ。 誰かが自分を愛してくれていたんじゃないか。誰かがいまも愛して…

体温

実家に犬がいる。 来年春で15歳の、豆しばおばあちゃんだ。おばあちゃんだけれど、散歩のときには飛んだり跳ねたり走ったりする。 ちっこくて、ふわふわで、ちょっとごわごわしてて、ほんのりと動物臭い。 そして、とてもあたたかい。 ぎゅっと抱きしめたら…

雑想――エッセーを読みながら自分を読む

「大切な情報をたくさん得ているかわりに、どうでもいい情報の洪水が、私の脳にはがんがん入ってきているのだ。 それを偶然にも一時的に中断してみたら、頭の中がすっきりした。どうでもいい情報はやっぱり害なのだ、とあらためて思った瞬間だった。どうでも…

見る

人は見たいものしか見ない。目の前にあっても、ちゃんと見ることができない。 と、よく言われる。正しい。 しかし、ぼくはこうも思う。 目の前のものをそのまま見るには、どうしたらいいのか。 見ることができないのだから仕方ないと諦めるのではなく、でき…

挫折

毎週、NHK『ドキュメント72時間』を見ている。 どうしても頭から離れない女性がいる。 禅寺体験の回。参加していた女子大生だ。 警察官になることが彼女の夢だった。そのために大学に行って、自動車免許もとって、たぶん身体も鍛えていた。 しかし、車を運転…

世界とのつき合いかた

NHK『U-29』をたまに見る。若者が自らの人生を切り拓こうと苦闘するさまは、応援したくなる。将来に向かって盛り上がっていくエネルギーに満ちあふれている。 今回は日本酒専門の編集者の話。 サシ飲みが苦手という彼が、その理由を語る場面。 相手と一対一…

京大の学園祭

――いったい子供は、「絵」を描いているのだろうか。「絵」ではないのだ。自分の若々しい命をそこにぶちまけている(岡本太郎『自分の中に毒を持て』、123頁) 京大は学園祭の時期である。 11月23日から26日までの4日間。 直接の会場ではないはずの院棟周辺に…

信頼のエチュード

鴻上さんの『表現力のレッスン』を読んでいる。 この本は「信頼のエチュード」という演劇のレッスンで始まる。 ふたりで行う。前後に立って、前のひとは目をつぶって後ろに倒れる。後ろのひとは、倒れてくる前のひとを支える。 前のひとの信頼が試されるレッ…

芥川龍之介の恋文

芥川龍之介の恋文、やばい。 なんだこれは。 http://weemo.jp/v/f67f657a こんな恋文をもらったら、好きになってしまう。 たとえ嫌いな相手からもらったとしても、この恋文にはグラッときてしまう。 こころがうつくしい。 罪だよ、芥川さん。 もうひとつ見つ…

ふんどし

とつぜんだが、ふんどしを締めたことはあるだろうか。 真っ白な長めの手ぬぐいを股の間に通して、腰のあたりでクルクルっと巻いて、ギュギュっと締めつけるだけ。あーら簡単、3分くらいで締められる。 中学時代の夏休み、学校の課外活動のことである。 毎年…

人間の強さ

『マツコの知らない世界』を見ていた。いろんな分野のオタクが出てきて、好きな分野を紹介していく番組。触れたこともない世界が目の前に広がるから、楽しい。 さて、ホットケーキミックスの回である。 この番組では、ゲストが「なぜ対象にのめりこむように…

『蔵』水出しコーヒー

高校生まで、コーヒーが飲めなかった。 子どものころから、親がコーヒーを淹れたときに部屋中に広がるコーヒー独特の匂いが嫌いだった。中学生のとき、「おいしいよ」と言ってくるので、漂ってくる匂いに鼻をつまらせながら一口飲んだ。経験したことのない苦…

説明の仕方

とある講義の一風景。 教授が人を指名する。 「多元主義って、なに? 説明して」 質問は突然やってくる。指された人は、一気に緊張したのだろう。心拍数があがって、呼吸が浅くなる。その証拠に、若干声が高めになっている。 「えー、さまざまな、利害関係者…

人間は障害物

小雨が降るなか、自転車で走る。 目的地まで1時間くらいかかる。雨も降ってるし、早めにつきたい。 帽子をかぶって目に雨が入るのを防ぐ。レインウェアの上下を着る。荷物をビニールで覆う。 よーく見なければ、僕とはわからないだろう。帽子に隠れた顔で判…

マインドフルネス

ストレス対策1 マインドフルネスについて。 つらかった時期があった。どん底だった。 そのとき生きるために身につけた術のひとつが、マインドフルネスだった。 マインドフルネスがちょうどテレビで話題になりかけた時期だった。わかりやすい書籍も出始めた時…

大学生

高校生のころ、近くに大学生がいた。彼は服装や髪形に気を遣っていた。背筋もピンとしていて、歩幅が広い。自信にあふれていた。かっこよかった。犬を連れている姿がさまになっていた。犬が立ち止まると、前かがみになって犬を見る。かっこいい。これが大学…

こころ

「違うんだ。君の心が閉じているんだ。もっと目の前の人間を見てよ」 心がどれだけ大事なのか、わかっていなかった。 複数人が集まって何かを作り上げるとき、まず個人の努力が重要だと思っていた。 個人が努力して、必要なことをやるのが決定的に重要だと思…