白くま生態観察記

上洛した白いくまもん。観察日記。勝手にコルクラボ

佐渡島さんとのこと

ぼくが佐渡島さんと出会ったのは、2016年11月のNHK「プロフェッショナル」だった。 その日の番組は、10代vsプロフェッショナルと題した特別編だった。そのひとつの企画に、天才編集者・佐渡島さんが出てきた。 番組のサイトは残っているけど、映像は残ってい…

コルクラボ

「自分はなんてダメなんだろうと思う人ほど、ダメ具合を正しく認識してないんだよね。ほんとにダメなところを避けて、四六時中ダメだと言ってる」 「ダメなところを見ていれば、ダメだからこうしようってなるはずなんだよね」 「ダメだと言いながら、ダメだ…

カプセルホテル

長方形の通路は、真っ白な壁で覆われていた。湿度管理された空気が身体にまとわりつき、呼吸をするたびに乾いたゼリーを飲み込むようだった。空気清浄機の回る音がやまない。匂いのない無機質の空間だった。天井からは白い光が照らす。行きかう人たちは、黒…

祈るピアニスト

はじめてプロのピアノを聴いて驚いたのは、音ではなく表情の豊かさだった。 テンポが速く軽やかな曲調の場面では顔も自然とほころんでいて、遅めのテンポで重い雰囲気の場面では顔にしわが寄っていて、甘くささやくようなイメージの場面だと「全身が愛で満ち…

ケイスケ・ホンダーーコンテクストによるイメージ

NHK『プロフェッショナル』で、本田圭佑を扱っていた。 サッカー選手でありながら、よく話題になるのは彼の言動である。 言動からは、ぐんぐん前に進んでいくエネルギーを感じる。 まったく後ろを振り返らない。弱音はぜったいに吐かない。「そんなのオレに…

ネット時代の感情ーー官能描写の隆盛

村山由佳さんの『ダブル・ファンタジー』がドラマ化されることに気づいた。WOWOWで6月から放送が始まる。http://www.wowow.co.jp/dramaw/wf/。 村山由佳さんは去年いくつか読んだ。『遥かなる水の音』をお薦めされてから、ちょいちょいつまんだ。『天使の卵…

感情は客観的である

音楽体験には適切な感情の構えが重要であると言ったけれど、感情とは何か、という問題を考えたい。感情を説明しなければ、どう構えたらいいのかを説明しきれないからである。 以下の文章は、三木清『人生論ノート』から取ってきた。これをタネに、感情の全体…

適切な感情の構え

「正しい聴き方を考えるんじゃなくて、とにかくクラシックに触れてみろ」みたいな話を書いてはいるけれど、じっさいには適切な聴く姿勢=聴く型は存在する。岡田暁生さんも指摘しているように、クラシックにはクラシックの聴き方がある。 これは私が確信する…

裏の妄想

ツイッターの裏垢を閉鎖するので、好きな妄想を救済しておきます。 表垢でつぶやくには勇気がいるから、ブログならちょうどいい。 恋の夜長 気になる子からLINEがきて、「どういう意図でこの単語入れたんだろ」「もしかしてぼくのこと……ないな」「いやでもワ…

クラシックとの出会い

むかし、クラシック音楽を教養だと感じていた。 正しい聴きかたがあると思っていた。正しい聴きかたを身につけてからでなくては、クラシックを聴く資格がない。ましてコンサートホールに行ってはいけない。クラシックへの入り口を開いていない門外漢が聴いて…

京都三名水ーー染井の水

京都にきて初めにやったことは、おいしい水の確保だった。 飲用水がおいしいか否かはQOLに直接かかわる。水は大事だ。紅茶やお茶を淹れるにも、ご飯を炊くにも、味噌汁にも、水は欠かせない。シンプルな飲食物ほど、水道水とおいしい水の違いが如実に表れて…

舞妓さんのかわいらしさ

おしろいを塗って花柄の着物を着た舞妓さんが、数メートル先で三味線にあわせて踊っていた。背中から膝裏まで、だらりの帯が覆っている。カブトムシの甲羅に似ていた。着物の袖は、振り上げた手から下に大きく垂れている。裾が地面をこすっていた。 芸妓にな…

普段着の着物

祭りに行った。正面のステージでバンドが演奏する。色のきつい光線が舞って、音が鼓膜に響いてくる。 その喧騒の外側で、着物の女性が慣れた手つきでタバコを取りだした。火をつけて、うまそうにひと息吸って吐き出す。そうやって喧騒を眺めている。横顔が妙…

自分だけを見ていた

彼女は、テニス部に入っていた。部活のある日には、ヨネックスのあの大きなバッグを背負って予備校に来ていた。 テニスは高級なスポーツの感じがした。イギリスの上流階級がやるもの、みたいなイメージがあった。ぼくの高校でもかっこいいやつだけがテニスを…

心の底

陸上の長距離をやっていたとき、タイムが伸び悩んだ時期があった。 男子校の高校2年のときである。ぼくは同学年で2番目に速かった。一番速いMは関東大会に出るくらいだった。ぼくより遅く入部したTもどんどん速くなっていて、抜かされるのも時間の問題だった…

映画『ゴースト』

映画『ゴースト』 無言の時間に、ありったけの愛を詰めこんだ映画。 物語構成は単純である。 同棲しはじめたカップルのうち、彼氏が強盗に殺されてゴーストになる。一時的に逃げた強盗は彼女も殺そうとする。死んだ彼はなんとか彼女を救おうとするけれど、ゴ…

ジコチューな「大丈夫?」

一昨年の春から、「大丈夫?」と聞くのをやめている。 たいていの人は、それほど親しくない人に対して「大丈夫じゃない」と言わない。私は限界です、いっぱいいっぱいでやるべきこともできません、なんて不名誉なことを言うだろうか。言うわけがない。 だか…

三島由紀夫『小説読本』

菫(すみれ)の花を見ると、「可憐だ」と私たちは感ずる。それはそういう感じ方の通念があるからである。しかしほんとうは私は、菫の黒ずんだような紫色の葉案を見たとき、何か不吉な不安な気持ちを抱くのである。しかし、その一瞬後には、私は常識に負けて…

松任谷由実「白い服、白い靴」

松任谷由実「白い服、白い靴」 http://j-lyric.net/artist/a000c13/l000e31.html 『マツコの知らない世界』 うぶな男子大学生がユーミンを紹介する。 その一場面。恋愛の教訓として「白い服、白い靴」を取り上げて説明を始めた。 マツコさんが遮って「ねぇ、…

嫌いなひと

嫌いなものを言うのは、怪しげな爽快感があってクセになる。 ぼくは、葬式で「とてもいい人だったよね」とだけ言う人が嫌いだ。 故人と一緒に過ごせば、良いところよりも、悪いところや不器用なところのほうが多く見えてくるはずなのに、いいところしか言わ…

関西のおにぎり

関西に来てはじめておにぎりを買う。 棚を見ながら、関東に比べてほんの少しおにぎりの値段が高いと思った。なぜだろう、気のせいかなと思いながらツナマヨと昆布を選んだ。 コンビニおにぎりの海苔を合体させて、かぶりつく一瞬はクセになる。ビニールのつ…

京都市は田舎

目の前にシカがいた。 鴨川である。 おお、こいつが噂のシカか、と思った。シカが出るとは聞いていたけれど、ほんとうにシカが出るとは信じられなかった。 もさもさと中州で草を食んでいる。身体は小さい。 かわいいなぁと思っていたら、ぼくの後ろを自転車…

『アナ雪』の不幸な解釈と、ほんとうの「ありのまま」について

『アナと雪の女王』は、日本では主題歌が一人歩きしてしまい、内容が伝わっていない悲しい映画だ。 主題歌の「let it go」は、NHKでも取り上げられるほどの露出になった。どうも「ありのままの自分を肯定する動き」「自分の感情を解放する喜び」がウケている…

カオスとコスモス

イ・ヨンド『ドラゴン・ラージャ』を小学生のときに読んでいた。ファンタジー作品で、民族ごとの世界観・宗教観にしびれていた。 いまでも憶えている話をひとつ。 手のひらいっぱいのおはじきを地面に投げ落としたとする。おはじきはバラバラに散らばって、…

高次の会話

「言葉にしてくれないと、わからないよ」と言われたことがある。 思いを口に出すのは恥ずかしかったり、うまく言えない気がしたりして、口をつぐんでしまう。すれ違いが生まれて、どんどん積もっていって、ある一点で爆発する。気づいたときには、もう手遅れ…

『フォレスト・ガンプ』

映画『フォレスト・ガンプ』 1950年代~1970年代、アメリカが大きく揺れ動いた時代を、ただまっすぐに駆け抜けた青年の映画。けっこう好き。 主人公のフォレスト・ガンプには、自閉傾向があった。言葉を文字通りにとらえて、ルールには愚直で、周囲の空気は…

メジャー・セカンド

2018年春はアニメが豊作で、有名どころがたくさんある。 キャプテン翼、ルパン三世、ゴールデンカムイ、ゲゲゲの鬼太郎、シュタインズゲート、東京グール、ピアノの森、メジャー・セカンド……。ほんとにたくさん。 メジャー・セカンドについて。 メジャー(フ…

LGBTが気持ち悪い人の本音 「ポリコレ棒で葬られるの怖い」news

LGBTが気持ち悪い人の本音 「ポリコレ棒で葬られるの怖い」 - withnews(ウィズニュース) withnewsはしっかりした記事を出していて、結構好きな媒体である。 かしこまった場では話せないけれど、人間ってこういうの読みたいよね、みたいな記事を的確に出し…

アレデ音楽シテイルツモリナンダカラネ

岡田暁生『音楽の聴き方』(中公新書、2009年) ぼくは、ツイッターで「芸術を語る視線を手に入れられる本」と評した。著者の実感とあわせて、思考の軌跡をたどれる本である。素晴らしい。 印象的なエピソードがある。 著者がドイツの友人宅を訪問したときの…

喫茶店

片方の男が深刻そうな顔で話しだす。 「好きな人がいないんだよね。いや付き合っている人がいないってわけじゃなくて、付き合っても、なんか『すき』という気もちになれないというか、こんなのが好きっていう感情なのかなと思ってしまう」 もう片方の男は、…