白くま生態観察記

上洛した白いくまもん。観察日記。勝手にコルクラボ

2017-01-01から1年間の記事一覧

フランク・ウイン『フェルメールになれなかった男』

フランク・ウイン(小林頼子・池田みゆき訳)『フェルメールになれなかった男――20世紀最大の贋作事件』(ちくま文庫、2014年) 友人からのおすすめ。「芸術家に対して我々が抱く諸々のイメージそのままの繊細かつ傲慢な画家が、自分を置き去りに先に先にと進…

ふんどし

とつぜんだが、ふんどしを締めたことはあるだろうか。 真っ白な長めの手ぬぐいを股の間に通して、腰のあたりでクルクルっと巻いて、ギュギュっと締めつけるだけ。あーら簡単、3分くらいで締められる。 中学時代の夏休み、学校の課外活動のことである。 毎年…

司馬遼太郎『竜馬がゆく』

司馬遼太郎『竜馬がゆく』(文春文庫、1974-1975) むかし、ある人がツイッターで呟いていた。 思いだして、秋の古本市(百万遍)で買った。全8冊。しめて600円なり。 いやーおもしろかった。 坂本竜馬を中心に、幕末史を追っていく。まず、坂本竜馬の造形が面白…

青木琴美『虹、甘えてよ。』

青木琴美『虹、甘えてよ。』第1巻(小学館、2017年) 少女漫画である。しかし少女漫画ではない。 「その後」を正面から描く物語。 漫画を読む人なら、青木琴美という名前は聞いたことがあるはずだ。たとえなくても、『カノジョは嘘を愛しすぎてる』や『僕の…

人間の強さ

『マツコの知らない世界』を見ていた。いろんな分野のオタクが出てきて、好きな分野を紹介していく番組。触れたこともない世界が目の前に広がるから、楽しい。 さて、ホットケーキミックスの回である。 この番組では、ゲストが「なぜ対象にのめりこむように…

『蔵』水出しコーヒー

高校生まで、コーヒーが飲めなかった。 子どものころから、親がコーヒーを淹れたときに部屋中に広がるコーヒー独特の匂いが嫌いだった。中学生のとき、「おいしいよ」と言ってくるので、漂ってくる匂いに鼻をつまらせながら一口飲んだ。経験したことのない苦…

説明の仕方

とある講義の一風景。 教授が人を指名する。 「多元主義って、なに? 説明して」 質問は突然やってくる。指された人は、一気に緊張したのだろう。心拍数があがって、呼吸が浅くなる。その証拠に、若干声が高めになっている。 「えー、さまざまな、利害関係者…

岡本太郎『自分の中に毒を持て』

岡本太郎『自分の中に毒を持て』(青春文庫、1993年) 岡本さんがお坊さんの前で講演を頼まれた。 前にしゃべった講師が「道で仏に逢えば、仏を殺せ」という言葉を使った。有名な言葉だ。一種真理をついている。しかし岡本さんは、ウソだと思った。最初に言…

人間は障害物

小雨が降るなか、自転車で走る。 目的地まで1時間くらいかかる。雨も降ってるし、早めにつきたい。 帽子をかぶって目に雨が入るのを防ぐ。レインウェアの上下を着る。荷物をビニールで覆う。 よーく見なければ、僕とはわからないだろう。帽子に隠れた顔で判…

鴨川と『パレード』

吉田修一『パレード』(幻冬舎文庫、2004年) 昼すぎに鴨川に行く。デルタでは、ちっちゃい子が遊んでいる。 「ママー、えびいてはるー!」 「えーどこどこ?……うわっ、つめたっ」 スボンをめくりあげて、母親が川のなかに入っていく。この時期の水は、だん…

マインドフルネス

ストレス対策1 マインドフルネスについて。 つらかった時期があった。どん底だった。 そのとき生きるために身につけた術のひとつが、マインドフルネスだった。 マインドフルネスがちょうどテレビで話題になりかけた時期だった。わかりやすい書籍も出始めた時…

大学生

高校生のころ、近くに大学生がいた。彼は服装や髪形に気を遣っていた。背筋もピンとしていて、歩幅が広い。自信にあふれていた。かっこよかった。犬を連れている姿がさまになっていた。犬が立ち止まると、前かがみになって犬を見る。かっこいい。これが大学…

こころ

「違うんだ。君の心が閉じているんだ。もっと目の前の人間を見てよ」 心がどれだけ大事なのか、わかっていなかった。 複数人が集まって何かを作り上げるとき、まず個人の努力が重要だと思っていた。 個人が努力して、必要なことをやるのが決定的に重要だと思…

塾講師

塾講師をしていたことがある。 地元に根ざした小規模の塾だった。 中学3年生、グループ授業の話である。 「初心者に受験学年を任せていいのかよ」と思った。なんの因果か、はじめて受け持ったのが中三だったのだ。教える技術も何もかもわからない。教科は国…

将来の話

「俺はさ、○○をしたいんだよね」 学部生と話していて自然に将来の話になる。 大学には、さまざまな地域から学生が集まる。多くの人は4年ほどで就職する。京都には就職先が少ないから、学生の目線は地元か東京にいく。たった4年で、京都から離れていってしま…

リズム感のない俳優

鴻上さんの著書に、こんなエピソードがある。 名越という、リズム感のない俳優がいた。踊りは下手だけれど、だれよりも楽しそうに踊る。演出家の鴻上は、うまくないけど幸せに踊る姿をみて、いつも幸福になる。それでいいと感じていた。 あるとき名越は、う…

道化

「○○のこと、どう思う―?」 「あいつトロいし、変に笑ってるし、なんかキモイわ―。無理」 「だよな。俺も無理だわ。話しかけてくんなっての」 となりから会話が聞こえてくる。 自分のことかと思って傷つきかける。こっそり顔をみて、知らない人であることを…

竹内友『ボールルームへようこそ』

竹内友『ボールルームへようこそ』(講談社) どうやって魅力を説明すればいいのか、ずっと考えていた。もちろん少年漫画的な面白さは満点である。絵の艶もあって、かなりおもしろい。 しかしそれだけでは、第5-9巻の魅力を説明できない。物語が一見進展し…

妙顯寺

京都の拝観料は高い。そこらの社寺に入ろうと思えば500円かかるし、有名なところだと700円もかかる。強気な値段設定だ。毎週のように観光しているので、硬貨が財布から消えていく。500円に見合うものがあれば文句ない。けれど、実際になかに入ってみると、ア…

ダンス姿勢保持と古武道

竹内友『ボールルームへようこそ』(講談社)が私的ブームである。 他人に嫌われないよう目立たず生きてきた主人公が、「ダンスという場では自分を出してもいいんだ嫌われないんだ」と気づき(第4巻まで)、パートナーと正面からぶつかり合うなかで、自分な…

圓光寺

圓光寺 雨が降った。よい状態の苔を見られる。圓光寺に行ってきた。 圓光寺のある一乗寺は坂になっている。急なので、自転車で登るのは難しい。自転車を押しながら目的地まで。 圓光寺http://www.enkouji.jp/grounds.html 池泉式の庭園がある。建物に座って…

高石宏輔『声をかける』

高石宏輔『声をかける』(晶文社、2017年)。 某氏がおすすめしていた。「ナンパは自傷。」との言葉にひかれて購入。 よかった。 【構成】 話すのが苦手、ノリに身を任せるのも苦手。はっきりいって、主人公は女性に声をかける人種ではない。しかし彼は、そ…

理想像

小学生のころ、大人になったらこうなりたいという理想像があった。 夢水清志郎だ。 はやみねかおる「名探偵夢水清志郎事件ノート」のシリーズに出てくる探偵だ。黒いスーツを年中着続けて、やせ形で身長は高い。針金細工みたいな。部屋にはうずたかく積まれ…

道尾秀介『光媒の花』

道尾秀介『光媒の花』(集英社、2012年)。 短編連作集。そうくるか! という驚きの連続で、心が揺さぶられる。緩急がしっかりしている印象。すごい。 友人が紹介していて、たまに読むサイトがある。「作家の読書道」だ。道尾さんは、「相手の頭の中に感情を…

外的な要求と、内的な要求

外的に要求されることと、内的に要求されることが違うことがある。たとえば腕立て伏せをするときに、筋トレの知識がない状態で両手両足を地面につけて腕を曲げて伸ばすと、筋トレの意味で「腕立て伏せ」にはならない場合が多い。正しいフォームをまねしてい…

盆踊り

近所のお祭りに参加した。居合を教えてくれる人たちも参加していて、その手伝いもかねて。その土地で暮らすからには、外から眺めるんじゃなくて、かかわっていかないとわからないものがある。たった2年だけれど、そのなかではできるかぎり。 盆踊りがあった…

大文字山、送り火の炭

8月16日に五山送り火が催される。2017年の夜8時は晴れていて、風もあって涼しい。出町柳と鴨川デルタは人で埋め尽くされている。警察官が交通整理をして一部通行止めを行う。地元の人はよく見えるポイントを知っているので、人の少ない場所で静かに…

京都のちっちゃな大仏さん

京都に大仏がある、という話を聞いて方広寺に行ってきた。 鴨川の東側、五条から七条の間に正面通という道がある。その由来は、大仏の正面にある通だから。ということで正面通を東に進むと、報国神社に行きつく。 おかしい。大仏がいないじゃないか、と思い…

さいきん読んだ本とか。 村山由佳『星々の舟』(文春文庫、2006年) 短編連作集。すんごい。 直線的な幸福ではなく、ねじれきったすえの、一抹の幸せを描く 「自分だけの足で独りで立つことができてこそ、人は本当の意味で他の誰かと関わることができる…

合気と居合の足さばき

夏休みなので居合をしている。合気と居合とで足さばきに大きな違いがあるなぁと理解してきた。 富木流合気道の足さばきは、基本的に半身を作るためにある。前足を相手に正対させながら、後足を45度ほど開く。重心を体の真ん中にもってきて相手に正対するた…